🎭 仮定法の完全解剖: 「現実との距離」を操る魔法
仮定法をマスターする鍵は、たった一つの**「感覚」**です。
🔑 核心イメージ:「距離(Distance)」
英語の「過去形」は、単に「昔のこと」を表すだけではありません。本質は**「今ここにある現実からの距離」**です。
- 時間的な距離 →過去形 (昔の話)
- 現実的な距離 →仮定法 (妄想の話)
- 心理的な距離 →丁寧語 (Could you…? は距離を置いた控えめな言い方)
「現実離れしていることを示すために、形をあえて過去にズラして距離を取る」。
これが全てのルールの根源です。
1. 仮定法過去 (現在の妄想) 💭
「もし(今)~なら、…するのになあ」
現在の事実とは反対のことを仮定します。「形は過去、意味は現在」です。
📝 公式
If + S + 過去形, S + 助動詞の過去形 + 動詞の原形
🧠 助動詞の使い分け(ニュアンスの違い)
後ろに来る助動詞(would / could / might)で意味が変わります。
- would (~するだろうに) ➡ 意志・結果
- If I were free, I would go. (暇なら(間違いなく)行くよ)
- could (~できるのに)➡ 可能・能力
- If I were a bird, I could fly. (鳥なら飛べるのに=能力)
- might (~かもしれないのに) ➡ 推量・可能性
- If I had money, I might buy it. (お金があれば買うかもね)
⚠️ 重要ポイント:be動詞の「Were」
- 主語が I でも He でも、すべて were を使います。
- これは「現実ではない」という強烈な違和感(サイン)を出すためです。
- (口語では was も使われますが、フォーマルな場や学習では were が正解です)
2. 仮定法過去完了 (過去の妄想・後悔) 😢
「あの時(昔)~だったら、…だったのになあ」
過去の事実とは反対のことを仮定します。「過去のこと」を距離を置いて言うため、過去よりさらに古い**「大過去(過去完了形)」**を使います。
📝 公式
If + S + had + 過去分詞, S + 助動詞の過去形 + have + 過去分詞
🗣️ 例文で見るニュアンス
- 肯定の後悔:
- If I had known the truth, I would have told you.
- (もしあの時真実を知っていたら、あなたに言ったのに。)
- 事実:知らなかったから、言わなかった。
- 否定の後悔:
- If I hadn’t eaten so much, I wouldn’t have got sick.
- (あんなに食べていなかったら、具合が悪くならなかったのに。)
- 事実:食べ過ぎて、具合が悪くなった。
3. 混合仮定法 (時空を超えた妄想) 🌪️
「(昔)~していたら、(今ごろ)…なのに」
これができると上級者です!
「原因は過去」だけど「結果は現在」という場合、時制をミックスさせます。
📝 公式
If + S + had + 過去分詞 (過去の仮定), S + 助動詞の過去形 + 原形 (現在の結果)
🗣️ 例文
- If I had studied English harder (then), I would be in London now.
- (もしあの時もっと英語を勉強していたら、今ごろロンドンにいるのになあ。)
- 前半:過去完了(昔の後悔)
- 後半:仮定法過去(今の妄想)
- ※目印:文末に
nowやtodayがつくことが多いです。
4. 仮定法未来 (未来の可能性) 🔮
未来のことについて仮定する場合、可能性の度合いで2つに分かれます。
🅰️ パターンA: should (万が一)
「万が一~なら」
可能性は低い(1〜5%くらい)けれど、ゼロではない場合。
- If it should rain tomorrow, the party will be canceled.
- (万が一明日雨なら、パーティーは中止です。)
- ※後ろの文は「would(推量)」だけでなく、「will(予定)」や「命令形(Please …)」も使えます。ここが特殊!
🅱️ パターンB: were to (完全な空想)
「仮に~だとしたら」
物理的にありえないことや、可能性をほぼゼロと考えている場合。
- If the sun were to disappear, we would all die.
- (もし太陽が消滅したら、私たちは皆死ぬだろう。)
- ※太陽はなくなりません。完全な思考実験です。
5. 【上級】 If の省略と倒置(とうち) 🎩
「If」という単語を使わずに仮定法を表す、かっこいい(文語的な)表現です。
ルールは簡単。**「If を消して、疑問文の語順にする」**だけ!
① Were の倒置 (現在の妄想)
- If I were in your place, …
- ⬇
- Were I in your place, …
- (もし私があなたの立場なら…)
② Had の倒置 (過去の後悔)
- If I had known it, …
- ⬇
- Had I known it, …
- (もしそれを知っていたら…)
③ Should の倒置 (万が一)
- If anything should happen, …
- ⬇
- Should anything happen, …
- (万が一何かが起きたら…)
6. 【上級】 If を使わない表現(隠れ仮定法) 🙈
文脈の中に「条件」が含まれているパターンです。
① Without / But for (~がなければ)
- Without your help, I could not do this.
- (あなたの助けがなければ、これはできないでしょう。)
- If it ware not for your help…
② Otherwise (そうでなければ)
前の文を受けて、「もしそうでなかったら」と仮定します。
- I ran to the station. Otherwise, I would have missed the train.
- (私は駅へ走った。そうでなければ(=走っていなければ)、電車に乗り遅れていただろう。)
③ 不定詞 / 分詞構文 / 主語
- To hear him speak, you would think he is American.
- (彼が話すのを聞けば、アメリカ人だと思うだろう。)
まとめ:仮定法の極意 📜
- 基本は「距離感」:現実から離れるから、形を昔にする。
- 時制のズレ:
- 今の話 → 過去形
- 昔の話 →過去完了形
- If は消せる:
Were I...,Had I...,Should I...の形を見たら「仮定法だ!」と反応する。
これさえ理解できれば、仮定法は怖くありません!
仮定法過去完了を日常会話
仮定法過去完了を日常会話で使えるように、様々なシチュエーションでの例文をたくさん集めてみました。後半は恋愛シーンを取り上げています。
過去の出来事を後悔する場合
- もし私がもっと勉強していたら、あの大学に入れたかもしれないのに。
- If I had studied harder, I might have been able to enter that university.
- あの時、彼のアドバイスを聞いていれば、こんなに失敗しなかったのに。
- If I had listened to his advice, I wouldn’t have made so many mistakes.
- もっと早く彼に気持ちを伝えていれば、こんなことにならなかったのに。
- If I had told him how I felt earlier, things wouldn’t have turned out this way.
過去の出来事に対する想像
- もし私がそのパーティーに行っていたら、彼に会えたかもしれない。
- If I had gone to that party, I might have met him.
- もし私がその仕事を引き受けていたら、今頃もっと忙しかっただろう。
- If I had taken that job, I would probably be much busier now.
- もし私がその本を読んでいたなら、あのクイズに正解できたのに。
- If I had read that book, I could have answered that quiz correctly.
過去の出来事を前提とした仮定
- もし彼がもっと早く出発していれば、飛行機に間に合っただろう。
- If he had left earlier, he could have caught the plane.
- もし私がその道を選んでいたら、今頃全く違う人生を送っていたかもしれない。
- If I had chosen that path, I might be living a completely different life now.
過去の出来事を後悔するニュアンスを和らげる場合
- もっと早く知り合っていればよかったのにね。
- I wish I had met you sooner.
- あの時、彼をもっと応援してあげればよかった。
- I wish I had supported him more then.
その他
- もし私がスーパーパワーを持っていたら、世界を救えたかもしれない。
- If I had superpowers, I might have been able to save the world.
- もし私が鳥だったら、どこへでも自由に飛んでいけるのに。
- If I were a bird, I could fly anywhere I wanted.
恋愛における仮定法過去完了の日常会話
恋愛のシチュエーションでは、過去の出来事を悔やんだり、別の可能性を想像したりすることが多く、仮定法過去完了が自然と使われます。
相手に伝えたい場合
- もっと早くあなたのことを好きだって言っていればよかったのに。
- If I had told you I liked you sooner, things might have been different.
- あの時、あなたの誘いを断らなければよかった。
- If I hadn’t turned down your invitation, things might have worked out.
- もっと連絡を取っていればよかった。
- If I had contacted you more often, maybe we could have been closer.
相手の気持ちを想像する場合
- もし私があの時、彼の気持ちをちゃんと聞いていたら、彼はこんなに傷つかなかったかもしれない。
- If I had really listened to his feelings then, he might not have been so hurt.
- もし私がもっと彼のことを理解できていたら、こんな別れ方にならなかったかもしれない。
- If I had understood him better, we might not have broken up like this.
過去の出来事を振り返りながら、未来について話す場合
- もしあの時、告白していれば、今は幸せな日々を送っていたかもしれない。
- If I had confessed my feelings then, I might be happy now.
- もし私が彼の気持ちを拒んでいなかったら、今の彼はどうしているんだろう。
- I wonder what he would be like now if I hadn’t rejected him.
相手の行動を想像する場合
- もし彼が私のことをもっと好きだったら、もっと積極的にアプローチしてきたんじゃないかな。
- If he had liked me more, he would have approached me more actively.
- もし彼女が私の気持ちをわかっていたら、きっと違う反応をしたはずだ。
- If she had known how I felt, she would have reacted differently.
まとめ
恋愛における仮定法過去完了は、過去の出来事を後悔したり、別の可能性を想像したりする際に、感情を込めて表現するのに役立ちます。様々なシチュエーションで練習し、自分の言葉で表現できるようにしましょう。
仮定法過去完了に関する練習問題に挑戦しよう!
ここは**「あの時〜だったら、…だったのになあ」**という、**過去への後悔や「たら・れば」**の話です。
形が長くなりますが、リズムで覚えてしまいましょう。
- If 節:
had + 過去分詞 - 後半:
助動詞(would/could) + have + 過去分詞
第1部:和文英訳(日本語 ➡ 英語) 🇯🇵➡🇺🇸
次の日本語を英語に直してください。
- もしあの時地図を見ていたら、道に迷わなかっただろうに。
- もしもっと一生懸命勉強していたら、試験に受かったのになあ。
- もし昨日雨が降っていなかったら、私たちはテニスができたのに。
- もっと早く起きていれば、始発電車(the first train)に間に合ったのに。
- もし私にお金が十分にあったら(had had)、そのバッグを買っただろう。
- あの映画を見ておけばよかったなあ。(I wishを使って)
- もしあなたが電話してくれていたら、私は迎えに行ったのに。(pick you up)
- もし彼の忠告を聞いていたら、私は失敗しなかっただろう。
- そんなひどいことを言わなければよかったなあ。(I wish I hadn’t…を使って)
- あなたの助けがなかったら、私はその仕事を終えられなかったでしょう。(If it had not been for… を使って)
第2部:英文和訳(英語 ➡ 日本語) 🇺🇸➡🇯🇵
次の英語を日本語に直してください。
(would have = 〜しただろう、could have = 〜できただろう)
- If I had known the truth, I would have told you.
- If she had taken the taxi, she would have arrived on time.
- I wish I had visited Kyoto last year.
- If I had not been sick, I could have joined the party.
- If I had had a camera, I would have taken a picture of the bird.
- I could have passed the exam if I had tried harder.
- I wish I had not eaten so much lunch.
- Without your support, I would have given up.
- If the team had practiced more, they might have won the game.
- Had I known he was coming, I would have stayed home. (※倒置)
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⬇️ スクロールして答え合わせ ⬇️
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✅ 解答と解説
第1部:和文英訳 答え
- If I had looked at the map, I would not have lost my way.
- 道に迷う = lose one’s way。過去のことなので
would not have + 過去分詞。
- 道に迷う = lose one’s way。過去のことなので
- If I had studied harder, I would have passed the exam.
- 仮定法過去完了の代表的な例文です。
- If it had not rained yesterday, we could have played tennis.
- 「できたのに」は能力・可能性なので
could have played。
- 「できたのに」は能力・可能性なので
- If I had got(ten) up earlier, I could have caught the first train.
- 間に合う = catch。
- If I had had enough money, I would have bought the bag.
- ここが最難関です!「(あの時)持っていたら」は
hadの過去完了形なので、had hadと2回続きます。間違いではありません。
- ここが最難関です!「(あの時)持っていたら」は
- I wish I had seen the movie.
- 「あの時見ておけば」という過去の後悔。
- If you had called me, I would have picked you up.
- 迎えに行く = pick (人) up。
- If I had listened to his advice, I would not have failed.
- listen to = 〜を聞く。
- I wish I hadn’t said such a terrible thing.
- 否定の願望。「言わなければよかった」。
- If it had not been for your help, I could not have finished the work.
If it had not been for ~= 「もし(あの時)〜がなかったら」。これも決まり文句です!
第2部:英文和訳 答え
- もし(あの時)真実を知っていたら、あなたに言った(教えた)だろうに。
- 実際は知らなかったので、言わなかった。
- もし彼女がタクシーに乗っていたら、時間通りに到着しただろうに。
- arrive on time = 時間通りに着く。
- 去年、京都を訪れていたらよかったのになあ。
- 実際は行かなかったことへの後悔。
- もし病気でなかったら、パーティーに参加できたのに。
- could have joined = 参加できた(可能性)。
- もしカメラを持っていたら、その鳥の写真を撮っただろうに。
- ここも
had hadの形。前半の had は助動詞、後半の had は「持っている」という動詞の過去分詞です。
- ここも
- もしもっと努力していたら、試験に合格できただろうに。
- If節が後ろに来るパターンもあります。
- あんなにたくさんお昼ご飯を食べなければよかったなあ。
- 食べ過ぎて苦しい時のセリフです。
- あなたの支え(サポート)がなかったら、私は諦めていただろう。
- Without … = If it had not been for … (もし〜がなかったら)。
- チームがもっと練習していたら、試合に勝てたかもしれないのに。
- might have won = 勝ったかもしれない(推量)。
- もし彼が来ると知っていたら、私は家にいたのに。
Had I knownはIf I had knownの If を省略した形(倒置)です。上級編ですが、読めるようにしておきましょう!



