助動詞「must」について
「must」は英語の助動詞の中でも、義務・必要性と**強い確信(推量)**という、非常に強い意味合いを持つ単語です。
1. 義務・必要性 (Obligation / Necessity)
「〜しなければならない」「〜する必要がある」という意味で、避けられない義務や必要性を表します。これは、規則、法律、状況、または話し手の強い意志から生じるものです。
- You must wear a seatbelt in the car. (車の中ではシートベルトを着用しなければならない。)
- I must finish this report by Friday. (金曜日までにこのレポートを終えなければならない。)
- Students must submit their assignments on time. (学生は課題を期限内に提出しなければならない。)
否定形: must not
/ mustn't
「〜してはいけない」「〜するな」という、禁止を意味します。非常に強い禁止のニュアンスがあります。
- You must not smoke in here. (ここで喫煙してはいけない。)
- You mustn’t touch that button. (そのボタンに触れてはいけない。)
「have to」との違い
「must」と「have to」はどちらも義務を表しますが、ニュアンスに違いがあります。
- must: 話し手の主観的な判断や、個人的な必要性、または規則を強調する際に使われます。話し手の強い感情が込められていることが多いです。
- I must call my mother. (母に電話しなければならない。) ← 自分がそうしたい、する必要があると感じている
- have to: 外部の状況や規則、客観的な必要性によって強いられている義務を表します。
- I have to work tomorrow. (明日、仕事に行かなければならない。) ← 外部の事情(仕事のスケジュールなど)による義務
2. 強い確信・推量 (Strong Certainty / Logical Deduction)
「〜に違いない」「きっと〜だろう」という意味で、論理的な根拠に基づいて強い確信を持って推量する際に使われます。
- He must be tired after working all day. (一日中働いた後だから、彼は疲れているに違いない。)
- That must be the correct answer. (それが正しい答えであるに違いない。)
- You haven’t eaten all day. You must be hungry. (一日中何も食べていないね。お腹が空いているに違いない。)
否定形: cannot
/ can't
強い確信の否定形は「must not」ではなく、「cannot」または「can’t」を使います。「〜のはずがない」「〜であるはずがない」という意味になります。
- He can’t be serious. (彼は本気であるはずがない。)
- That cannot be true. (それは本当であるはずがない。)
「must」の時制
「must」は現在形と過去形が存在しません。過去の義務や未来の義務を表現する場合は、「have to」の形を使います。
- 過去の義務:
had to
- I had to work late last night. (昨夜、遅くまで働かなければならなかった。)
- 未来の義務:
will have to
- I will have to study harder for the next exam. (次の試験のためにもっと一生懸命勉強しなければならないだろう。)
「must」は、その強い意味合いゆえに、使い方を間違えると誤解を招く可能性があります。特に義務と強い確信の否定形が異なる点に注意してください。
助動詞「must」の類似表現
「must」は「〜しなければならない」という義務・必要性と、「〜に違いない」という**強い確信(推量)**という、非常に強い意味を持つ助動詞です。文脈によって様々な類似表現があります。

1. 義務・必要性 (Obligation / Necessity
) の類似表現
「〜しなければならない」「〜する必要がある」という義務や必要性を表す際の代替表現です。
- have to:
- これは「must」の最も一般的な代替表現で、多くの場合互換性があります。しかし、「have to」は外部からの客観的な状況や規則によって強いられる義務を表すのに対し、「must」は話し手の主観的な判断や個人的な必要性を強調する傾向があります。
- 例: I must call my parents. (親に電話しなきゃ。- 自分がそうしたい/する必要があると感じている)
- 例: I have to work tomorrow. (明日、仕事に行かなければならない。- 会社の規定など外部の事情で)
- should / ought to:
- 「〜すべきだ」という、助言や軽い義務を表します。「must」よりも強制力が弱く、そうしないと困るというほどではない場合に用います。
- 例: You must finish your homework. (宿題を終わらせなければならない。- 強い義務)
- 例: You should finish your homework. (宿題を終わらせるべきだ。- 助言/軽い義務)
- need to do:
- 「〜する必要がある」という必要性を強調します。「must」と同様に個人的な必要性を表すことも多いですが、より客観的な必要性を示すこともできます。
- 例: I must buy some groceries. (食料品を買わなきゃ。- 強い個人的な必要性)
- 例: I need to buy some groceries. (食料品を買う必要がある。- 買わないと困るという必要性)
- be obliged to do:
- 「〜する義務がある」という、法律的または道義的な義務をフォーマルに表現します。
- 例: We are obliged to follow the rules. (私たちは規則に従う義務がある。)
- It is necessary to do:
- 「〜することが必要である」という、客観的な必要性を明確に述べる表現です。
- 例: It is necessary to obtain a visa for this country. (この国にはビザを取得する必要がある。)
2. 強い確信・推量 (Strong Certainty / Logical Deduction
) の類似表現
「〜に違いない」「きっと〜だろう」という強い確信を表す「must」の代替表現です。
- certainly / definitely:
- 副詞を使って「間違いなく」「確かに」といった強い確信を示します。動詞の前に置いて使われます。
- 例: He must be home. (彼は家にいるに違いない。)
- 例: He is certainly home. (彼は確かに家にいる。)
- It is certain that S + V:
- 「〜であることは確実だ」という、客観的な確実性を明確に表現します。
- 例: He must be innocent. (彼は無実に違いない。)
- 例: It is certain that he is innocent. (彼が無実であることは確実だ。)
- There is no doubt that S + V:
- 「〜であることは疑いようがない」という、強い確信を表現します。
- 例: You must be right. (あなたが正しいに違いない。)
- 例: There is no doubt that you are right. (あなたが正しいことは疑いようがない。)
「must」はその強い意味合いゆえに、使用する際は注意が必要です。これらの類似表現は、「must」の持つ義務や確信の度合いを、より細かく調整したり、異なる文脈で表現したりする際に役立ちます。
助動詞「must」の慣用表現
「must」は、その強い意味合いから、特定の慣用表現の中で使われることで、義務や確信、あるいは皮肉などのニュアンスを強調します。

1. must have + 過去分詞
- 意味: 「〜だったに違いない」「〜したはずだ」
- 解説: 過去の出来事に対して、強い確信を持って推量する際に使います。これは「must」の「強い確信」の用法を過去に適用したものです。
- 例文:
- He must have forgotten about our meeting. (彼は私たちの会議のことを忘れたに違いない。)
- She must have been very tired after the long flight. (長いフライトの後だから、彼女はとても疲れていたに違いない。)
2. must be + (現在分詞 / 形容詞)
- 意味: 「〜しているに違いない」「きっと〜だろう」
- 解説: 現在進行中の状況や、現在の状態について強い確信を持って推量する際に使います。
- 例文:
- The phone is ringing. It must be John. (電話が鳴っている。ジョンに違いない。)
- You must be joking! (冗談を言っているに違いない!)
3. (all) that a person must do
- 意味: 「〜がしなければならないことの全て」「〜さえすればよい」
- 解説: 非常にシンプルな義務や、それ以外のことはしなくてよいという限定的な意味合いを強調します。
- 例文:
- All you must do is sign here. (あなたがしなければならないことの全てはここに署名することだけだ。)
- That’s all I must do for now. (今私がしなければならないことはそれだけだ。)
4. It's a must.
/ ~ is a must.
- 意味: 「それは必須だ」「〜は欠かせないものだ」
- 解説: 名詞として「必須事項」「絶対に必要なもの」を意味します。口語でよく使われます。
- 例文:
- Good communication is a must in a team. (良いコミュニケーションはチームにおいて必須だ。)
- Visiting Kyoto is a must for any tourist in Japan. (京都を訪れるのは、日本を訪れる観光客にとって必須だ。)
5. You really must (do something).
- 意味: 「絶対に〜すべきだ」「ぜひ〜しなさい」
- 解説: 相手に強く勧める際に使います。義務というよりは、非常に強い推奨や熱心な誘いのニュアンスです。
- 例文:
- You really must try this cake; it’s delicious! (このケーキは絶対に試すべきだよ!美味しいから!)
- You must come visit us sometime soon. (近いうちにぜひ私たちに会いに来てね。)
「must」の慣用表現は、その強い意味合いをベースに、過去の推量、現在の状態に対する確信、そして強い推奨といった多様なニュアンスを表現します。これらのフレーズを覚えることで、より自然で表現豊かな英語を話せるようになるでしょう。
mustを深く知ろう
「must」には過去を表現する方法がない。(have to ~を代わりに使用する。)
「must」には「義務」、「禁止」、「勧誘」、「推量」、「必然」などがある。
・You must wash your hands to protect virus.
(あなたは、ウイルスを防ぐために手を洗わなければならない。)
・You must take a shower to enter this clean room.
あなたは、このクリーンルームに入るためにシャワーを浴びなければならない。
・You musn’t (must not) borrow any money.
(あなたは、一切お金を借りてはならない。)
・You must come and see me tonight.
(ぜひ今夜見に来て下さい。)
※招待する場合に表現することが多い。
・That must be a hero.
(きっとヒーローのはずだ。)
・He must have been interested in English.
(彼は、きっと英語に興味を持っただろう。)
・I must take ovfather’s company.
(私が、父の会社を引き継ぐしかない。)
<確認>
「have to~」って何⁉
助動詞の「must」には過去形がなく、[ will must ] のように助動詞の次に置くことができない。このことから、未来における表現や完了について表現する場合は「have to~」を代わりに用いる。
現在形 have to 三人称単数形現在形 has to
過去形 had to
未来形 will have to
(肯定文) I have to study English right now.
(私は、すぐに英語の勉強をしなければならない。)
(否定文)I don’t (do not) have to study Enjglsh right now.
(私は、すぐに英語の勉強をする必要がない。)
(疑問文)Do you have to study English right now?
(あなたは、すぐに英語の勉強をする必要がありますか。)
(答え方)Yes, I do. / No, I don’t. (do not).
「might」の用法について
「may」の過去形として、「might」になる。
「may」よりもより丁寧な表現となる。
・When I was a high school teacher, Kate might be genius at that time.
(私が高校の教員だったとき、ケイトはその時点で天才だったのかもしれない。)
・Might I leave me alone?
(一人にしていただけないでしょうか。)
「must」に関する練習問題

英文和訳 (Translate the following English sentences into Japanese.)
- You must submit your passport application by next Monday.
- She must be exhausted after working two shifts straight.
- You must not use your phone while driving.
- He must have forgotten his wallet; he looks really worried.
- All you must do is follow the instructions carefully.
- This new restaurant must be good; there’s always a long line.
- Good teamwork is a must for this project.
- I must remember to buy milk on my way home.
- He must not have received my email.
- You really must visit Kyoto if you come to Japan.
和文英訳 (Translate the following Japanese sentences into English.)
- 私たちは規則に従わなければなりません。
- 彼は一日中練習したので、疲れているに違いありません。
- ここで騒いではいけません。
- 彼女は鍵をなくしたに違いありません。
- 私がしなければならないことは、ただ聞くことだけです。
- このケーキは本当に美味しいに違いありません。
- 時間厳守は会議にとって必須です。
- 私は両親に電話することを忘れてはいけません。
- 彼は真剣であるはずがありません。
- あなたは絶対にこの本を読んでみるべきです。
解答 (Answers)
英文和訳
- あなたは来週の月曜日までにパスポート申請書を提出しなければなりません。
- 彼女は2シフト連続で働いた後なので、疲れているに違いありません。
- 運転中に携帯電話を使用してはいけません。
- 彼は財布を忘れたに違いありません。本当に心配そうに見えます。
- あなたがしなければならないことの全ては、指示に注意深く従うことだけです。
- この新しいレストランは美味しいに違いありません。いつも長い行列ができています。
- 良いチームワークは、このプロジェクトにとって必須です。
- 家に帰る途中で牛乳を買うのを忘れてはいけません。
- 彼は私のメールを受け取っていないに違いありません。
- 日本に来るなら、ぜひ京都を訪れるべきです。
和文英訳
- We must follow the rules. / We have to follow the rules.
- He must be tired after practicing all day.
- You must not make noise here. / You mustn’t make noise here.
- She must have lost her keys.
- All I must do is listen.
- This cake must be really delicious.
- Punctuality is a must for the meeting.
- I must remember to call my parents.
- He cannot be serious. / He can’t be serious.
- You really must read this book.